猫泥棒と木曜日のキッチン

猫泥棒と木曜日のキッチン

母親を早く亡くしたせいか周りから不憫な家庭に育った子供と言われるときがある。幸せな家族からは離れている家族として捉えているのだろうか、どうも周りが考えている理想の家族からはちょっと離れているらしい。

僕個人としては亡くなった母親に関しては正直もう少し生きていてほしかったという想いがある。もっといろいろな物を一緒に見たかったし、もっといろいろな話をしたかった。ただ、それでは自分が不幸な家庭に育ったかというと全くそんなことはないのになあと感じている。もちろん、周りの言う「理想の家族像」が違うというつもりはさらさらない。それはそれで幸せな家族の一つであると思う。だが、その形しか幸せな家族という物がありえないと言われるとやはり違和感が残る。

「猫泥棒と木曜日のキッチン」は僕が感じている(そして、ある程度の人たちはきっと感じているかもしれない)違和感を優しく表現している。みずき、健一、コウちゃん。何かを喪失している(と周りから思われている)三人は「家族」を作り上げていく。不幸から逃れるためではなく幸福を手に入れるために。

もし、あなたが「理想の〜」とやらを他人に押しつけているかもしれないと思ったときにはこの本を読んでほしいと心から願う。決まっているコースから外れたところで不幸に充ち満ちた地獄が待っているわけではない。あなたが一人きりで幸福につながると思っているコースへ一心不乱に歩いていくよりあなたとあなたの関係する人たちでいろいろな道を歩き回った方がいろいろな形の幸福を見つけられると思うよ。