銀盤カレイドスコープ(ISBN:4086301326)

集英社スーパーダッシュ文庫新人賞受賞者の作品。表紙で敬遠していたのですが、面白いという評判を 聞き、買ってみたら本当に面白かったという幸せな読書経験。

小説で描写が難しいものにスポーツが存在する。スポーツが持っているテンポと 人間の内面を描写することに長けた小説のテンポでは圧倒的にスポーツのテンポの方が速い。 よって、スポーツが持っているテンポに小説を近づけるには、言葉一つ一つを 軽く勢いをつけたものにしなければいけない。よって、ライトノベルのような 言葉一つ一つが純文学に比べると軽い物の方がスポーツを描写しやすいのだが、 そこに筆力が加わらないとスポーツを描写する際にバラバラと薄っぺらい物に なってしまう空中瓦解してしまう。

銀盤カレイドスコープ」はフィギュアスケートを題材とした小説であり、 それを的確に読者に伝えるにはスポーツのテンポ、マイナースポーツであるがゆえに (読者の側の)知識が欠落しているなど問題点が多い。 しかし、それらの問題点をクリアし、フィギュアスケートの軽やかなテンポと 生き生きとした楽しさが表現されている。非常に力量のある作家だと思う。

問題点は一つ。どう考えてもレジに持っていくのは恥ずかしい。 女の子に表紙を見られたら、それだけでサヨナラをつきつけられそうな表紙だ。 友達に表紙を見られたら、数日後には取り返しのつかない噂になって 回ってそうだ。まあ、ライトノベルの表紙なんて大抵そんなものなので 見つからないように努力するか、努力を諦めるかしましょう(^^;